2005年01月11日

シャープの事業戦略に対する疑問

シャープの事業戦略に対する疑問

先週からLas Vegasで開催中の2005 International CES関連のニュースが多数飛び交っている。

ITmediaに至ってはこんな特集まで組んで随分張り切っているようで誠にご苦労なことです。

 
近い将来にITと家電の世界が急接近、統合化していく流れにあることは周知の事実であり、このことに関して敢えてここで言及する必要は無いでしょう。
ま、そのような事情もあり今回のCESは非常に注目を浴びているわけですが、一連の報道を見ていると、
・あれ!その件もう公表しちゃうの?
・出来ればもう少しだけは秘密にしておいて欲しかったなぁ・・・
なんて将来の方向性を示すヒントがコッソリ含まれていたりして、実はドキドキの連続です。
予測が当たっていたのは嬉しいのですが・・・。
 
 
さて、本題のシャープ社についてですが、このところ、
液晶テレビ「アクオス」、太陽光発電システム「サンビスタ」、水蒸気で調理するオーブン「ヘルシオ」、と立て続けにヒット商品を生み出しており、1990年に登場した「目の付けどころが、シャープでしょ。」、という企業スローガン(約7年のブランクを経て2002年に再度復活)もあながち嘘ではなかったなぁ・・・、などと感慨深く思っている人も実は多いのではないでしょうか。
なお、シャープ社の企業スローガンの歴史はこちらが詳しい。

シャープは今回のCESにて昨年発表していた通り、2005年に米国市場向けにDLP リアプロジェクションテレビ(リアプロ)を発売することを正式に発表した。
(56インチの「56DR650」を3月に3,299.95ドル、65インチの「65DR650」を5月に3,799.95ドル)
また、同社はかつて「ガイア」の名称でリアプロジェクションTVを発売しており、1995年には同市場から撤退した経緯があるので、今回の件は米国のリアプロ市場へ再参入ということになる。
(リアプロについては下の説明「リアプロジェクションテレビ(リアプロ)とは?」を参照のこと)

最近どこかの国の大将もやって来た亀山工場が実家の近所にあることもあり、シャープの液晶関連製品には是が非でもがんばって欲しいと心から願っている。
しかし、今回のこのリアプロ進出は事業戦略として如何なものであろうか?
少なくとも頭の弱い私には「なにゆえ北米のみリアプロなのか?」全く理解出来ない。

液晶TV、プラズマTV、リアプロTVの市場予測

上のチャート(クリックすると拡大します)は世界のテレビ需要をJEITAの資料を元に野村證券金融経済研究所が予測したものであるが、ポイントは2つ
1)液晶テレビ市場は販売台数、金額ともに今後も引き続き成長する
2)地域別に見ると日本は既に安定期に入っており、北米市場の成長が著しい
以上2点を考慮すると、北米市場にターゲットを絞っている点は理解できる。
しかし、何故リアプロか?

ソニーは先日、「プラズマから撤退、液晶とリアプロに特化」との方向性を示している。
しかも、ここでの液晶はサムスンとの提携によるものであり、独自技術という点から見ればリアプロに特化と読み取っても良いだろう。
ただし、これは以前よりグランドベガという名称で国内メーカーとしては唯一北米市場にてリアプロを販売し続け培ってきたブランド力と技術力が組み合わさってのものである。

では、シャープはどうか?
北米市場はこれまで事実としてリアプロジェクションTVの販売実績が高く、同市場で今後の成長の活路を見出したい同社としては、リアプロで勝負!というロジックのもと今回の意思決定がなされたと想像されるが、果たして勝算はあるのであろうか?

先に書いておくが、リアプロジェクションテレビは液晶テレビ、プラズマテレビと比較して生産コストが断然に安い。特に画面サイズを大型化しても他と比較して価格上昇率が低いのが特徴である。
試しにshopping.comでリアプロTVと液晶TVの製品価格を比較してみて欲しい。
リアプロTVの価格比較
液晶TVの価格比較

ご覧の通り、液晶40インチとリアプロ60インチは殆ど同じ価格帯である。
つまり、40インチ以上の液晶テレビは、よほど画像のクオリティーが高いなどの付加価値がない限りは北米市場にて(恐らく国内市場でも)価格優位性を保つことが難しいと思われる。
従って、これまで同様に北米市場では大型FPDテレビではリアプロが中心となるであろう。
大型液晶テレビでは幾等コスト削減しても太刀打ちの出来ないと考えたシャープがリアプロに流れる理由はここにある。

ただしである。
私が気にしているのは同社が液晶とリアプロを平行して販売しようとしている点にある。
先程見たように、これらは40インチ前後では殆ど同じ価格帯になるため、このあたりのサイズを境に上をリアプロ、下を液晶と住み分けることになり、恐らくソニーも同様の戦略を取ってくると思われる。(将来的には50インチあたりかも知れない)

ソニーがリアプロで国内も含め派手に攻勢をかけてくることは間違いない。
リアプロの特徴である「低価格」、これまで培ってきた「ブランド力」に加えて、得意の画像処理エンジンを用いた「高画質」の3つを売りにしてくるのだ。

さて、それに対してシャープはどうか?
最も気にかかるのが「価格」である。
新たに投入するリアプロの低価格化には慎重にならざるを得ない。
というのも、下げすぎると40インチあたりの液晶を下回ってしまうからだ。
また、北米市場での実績も少ない事からブランド力も僅かである。
 
ちなみに、国内での液晶TV市場では既に敵なしの状況である。
私なら、北米でも液晶一本で勝負する。
もちろん、40インチ以下のジャンルでだ。
サムスンの追い上げは容赦ないであろう。しかし液晶でのパネル生産における技術力であれば十分に世界で勝負出来るはずである。

北米のリビングには大型テレビが云々。。。
テレビは家庭に1台しか無いのか?
リビング以外の部屋でも全て大型リアプロを設置しているのか?

何なら、北米でなく国内でリアプロをやれば良い。
液晶テレビでの認知度を利用すれば、今年度から始まるリアプロ戦争では非常に有利な条件が揃っている。
 
 
私は今回の一件でアクオスのブランド力が低下する事を非常に恐れている。
頼む、失敗しないでおくれ。
 
 
 
リアプロジェクションテレビ(リアプロ)とは?
スクリーンの後ろからプロジェクタを使って画像を映し出す方式のテレビのことで、背面投射型テレビと呼ばれているものです。
本体の後部から映し出された映像に光を当て、レンズやミラーで拡大して投影します。
従来はCRT(ブラウン管)方式を使用していたため、
1)画質が劣っていたことに加え、
2)画面を大きくするためには投射距離が必要であり本体が厚くなること、
という欠点があり、米国や中国では比較的普及が進んだものの、日本では鮮明な画質を
求める気質などからかこれまで殆ど普及しませんでした。

ところが最近、
1)従来のCRT方式から高温ポリシリコン液晶パネルなどを光学素子として採用しているマイクロディスプレイ方式に移行してきたことで画像の質が大幅に改善してきており、
2)投射レンズの配置と非球面ミラーの形状を見直すことで投射距離の短縮化に成功し理論的には画面サイズが60~70インチでの大きさでも奥行きは20cm以下という、液晶やプラズマと遜色のないリアプロジェクションテレビが十分実現可能になってきている。

画素型リアプロTVの中でも核となっているデバイスは、DMD(Digital Micromirror Device:DLPに使われる映像素子)もしくはLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)です。

Texas Instruments社のDLP(Digital Light Processing)方式についてはこちらが詳しいです。
また、LCDでは3枚のLCDを使用した3LCD方式(液晶3板透過方式)についてはこちらが詳しいです。

DLPと液晶リア・プロジェクション・テレビの比較はこちらが詳しい。

Posted by Ozaking at 2005年01月11日 23:46
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